働き方改革関連の助成金

時間外労働や同一労働同一賃金に関する規制を進める一方で、中小企業を対象とした助成金を通じてこれらの取り組みを支援しています。働き方改革関連法への対応は、人手不足時代でも従業員を採用できる職場、採用した人が定着し、業績も向上するような職場づくりのきっかけにすることもできるのではないでしょうか。

1.労働時間関係の助成金

(1)時間外労働等改善助成金――時間外労働上限設定コース
 時間外労働の短縮などのため、出退勤管理の機器・ソフトを導入して労働時間の管理を合理化する、外部専門家に業務内容の効率化等のコンサルティングを依頼する、機械・設備を導入して生産性を向上するなどの取り組みを行った企業に、下表の成果目標の達成状況に応じ、取り組みに要した費用の一部が支給されます 。
表 対象企業と成果目標

助成金の額は、時間外労働短縮に対しては50万円、100万円、150万円のいずれかです。成果目標での時間外労働の短縮幅が大きいほど助成額は多くなります。休日増を行った場合は25万円から100万円が加算され、こちらも休日増が多いほど加算額は大きくなります。なお、助成金の額は200万円が上限です 。
助成金の支給対象になる取り組みは次の1~10で、この中から1つ以上実施することとされています 。
1.労務管理担当者に対する研修(業務研修を含む)
2.労働者に対する研修(業務研修を含む)、周知・啓発
3.外部専門家(社会保険労務士、中小企業診断士など) によるコンサルティング
4.就業規則・労使協定等の作成・変更(計画的付与制度の導入など)
5.人材確保に向けた取組
6.労務管理用ソフトウェアの導入・更新
7.労務管理用機器の導入・更新
8.デジタル運行記録計の導入・更新
9.テレワーク用通信機器の導入・更新
10.労働能率の増進に資する設備・機器等の導入・更新
   (小売業POS装置、自動車修理業の自動車リフト、運送業の洗車機等)

(2)時間外労働等改善助成金――職場意識改善コース
 所定外労働の削減や年次有給休暇の取得促進に取り組んだ企業に、下表の成果目標の達成状況に応じて費用の一部が支給されます。対象となる取り組みは、(1)時間外労働上限設定コースの1~10と同じです。

 助成金の額は、目標①②を両方とも達成した場合は、100万円を上限として費用の4分の3、成果目標①のみの達成の場合は50万円を上限として費用の2分の1となります。助成対象の取り組みは(1)時間外労働上限設定コースで挙げたものと同じです。なお、30人以下の企業に対する優遇措置として、労務管理用機器・ソフトの導入等(取り組みの6から10)を行った場合は、補助率が4分の3から5分の4に引き上げられます 。

(3)時間外労働等改善助成金――勤務間インターバル導入コース
勤務間インターバル制は、働き方改革関連法の一つとして2019年4月1日施行の改正労働時間設定改善法で新設されました。終業時間から翌日の始業時間の間に一定の休息時間(「9時間から11時間」)を設けることなどを事業主の努力義務とするものです。特別条項付の36協定でご説明した「健康・福祉確保措置」の1つでもあり、「働き過ぎ」を抑える方策として普及が期待されています。 勤務間インターバル制度の導入の一例をご紹介すれば下図のようになります。

助成金は制度導入などを行った企業に、下表12の成果目標の達成状況に応じて、取り組み費用の一部を支給します。新規導入(表の①)で80万円か100万円、適用拡大・時間延長(図表12の②③)で40万円か50万円です(いずれも上限額)。助成対象の取り組みは(1)時間外労働上限設定コースで挙げたものと同じです。

(4)「人材確保等支援助成金」(働き方改革支援コース)
(1)から(3)の「時間外労働等改善助成金」の支給を受けた企業が対象になります。人材確保等支援助成金は、時間外労働の短縮などを進めるうえで必要な要員を増やす中小企業を支援する目的で2019年度に新設された助成金です。計画に基づいて新たに労働者を雇い入れて一定の雇用管理改善を達成した場合、「計画達成助成」として労働者1人当たり60万円(短時間労働者40万円)が支給されます。また、計画開始から3年経過後に生産性要件等を満たせば、「目標達成助成」として労働者1人当たり15万円(短時間労働者10万円)が支給されます 。

2.同一労働同一賃金の助成金

非正社員の待遇の改善というパート・有期法の趣旨に沿った見直しをするとすれば、待遇改善のための原資が必要になります。こうしたコストアップは、会社の生産性の向上等を通じて吸収しなくてはなりませんが、初期的な原資の一部について公的助成金を利用することも考えられます。同一労働同一賃金関連では、「キャリアアップ助成金」のうち 次のコースがあります 。
(1)「賃金規定等改定コース」
すべて又は一部の非正社員の基本給の賃金規定等を増額改定し昇給した場合に支給。支給額は、すべての非正社員で2%以上の増額改定の場合、対象労働者数が11人から100人では、1人当たり28,500円(生産性向上要件を満たした場合36,000円。以下、()付の金額は生産性要件のもの)、職務評価手法を活用した場合は1事業所19万円(24万円)の加算など。
(2)「賃金規定等共通化コース」
非正社員に関して正社員と共通の職務等に応じた賃金規定等を作成し適用した場合に支給。支給額は1事業所57万円(72万円)、対象労働者1人当たり2万円(2.4万円)加算(上限20人)など 。
(3)「諸手当制度共通化コース」
非正社員に関して正社員と共通の諸手当制度を新たに設け適用した場合に支給。支給額は1事業所38万円(48万円)、対象労働者1人当たり1.5万円(1.8万円)加算、共通化した諸手当数1つ当たり16万円(19.2万円)加算など。なお、対象労働者は20人が上限、対象手当は10手当が上限です。

※この投稿は、中小企業支援機構のWebサイトJ-Net21への以下の寄稿にもとづいており、図表は同サイトからの引用です。詳しくは、以下をご覧ください。
中小企業と働き方改革関連法(第2回)-労働時間の上限規制等
https://j-net21.smrj.go.jp/law/2019100701.html
中小企業と働き方改革関連法(第3回)-同一労働同一賃金-パート・有期法
https://j-net21.smrj.go.jp/law/2019102101.html