身元保証書-労基法違反にご注意を

 採用に際して、会社は、採用予定者に履歴書、誓約書などの書類提出を求めますが、身元保証書の提出を求める例も拝見します。従業員が会社に損害を与えた場合に身元保証人にも損害賠償を請求できるようにしておこうという趣旨と思います。このような書類の提出を求めること自体は法的に問題はありませんが、内容によっては法令違反になる場合があることに注意しておく必要があります。

◇労働基準法違反
 そのひとつは、「会社に損害を与えた場合は、従業員と連帯して〇〇万円を賠償する」といった項目を設けること。「〇〇万円」という具体的数字を記載することが労働基準法第16条(賠償予定の禁止)「使用者は, 労働契約の不履行について違約金を定め, 又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない」 に違反するのです。
 「〇〇万円」という具体的数字は、いまだ発生していない損害、したがって損害額が分からない損害について定めていますから、労基法16条の「損害賠償額を予定する」に該当するのです。こうした規定を禁止する趣旨は、労働者の自由意思を不当に拘束し、労働者を使用者に隷属させることを防ぐためです。
 第16条のいう「損害賠償額を予定する契約」の当事者としては労働者本人だけでなく、労働者の親権者などの身元保証人も含まれると解釈されていまので、「身元保証書」の上のような規定は労基法16条に違反し、労基法第13条「この法律で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については無効とする」により無効となります。

◇ 損害額全額を身元保証人に負担させることができるか
 では、「会社に損害を与えた場合は、従業員と連帯して損害を賠償する」とした場合はどうでしょう。もちろん労基法16条違反にはなりません。しかし、このような規定があっても、損害額の全額を身元保証人に負担させることが担保されるわけではありません。
 身元保証ニ関スル法律(昭和8年法律第42号)第5条が「金額を定むるにつき被用者の監督に関する使用者の過失の有無、身元保証人が身元保証を為すに至りたる事由及びこれを為すに当り用いたる注意の程度、被用者の任務又は身上の変化その他一切の事情を斟酌す」としているからです。
 条文の趣旨は、裁判所が損害賠償額を判断する際には、使用者の過失の有無や程度、身元保証人がどこまで労働者の行為を注意できたか、それともかかわって身元保証当時から労働者の任務等が変わっていないか、等を総合的にみるとしているのです。実際の紛争事例でも、身元保証人に求められる賠償額は、損害額の一部にとどまるとする例がほとんどといわれています