新型コロナ感染症と休業–シフト制のパート労働者の場合
新型コロナウイルス感染症に伴う休業や勤務時間の短縮の場合、休業等が使用者の責に帰すべき理由によるものであれば、パートタイマーの人についても、休業手当は払わなくてはなりません。厚生労働省の「新型コロナウイルス感染症に関するQ&A」は、「アルバイトやパートタイム労働者、派遣労働者、有期契約労働者など、多様な働き方で働く方も含めて、休業手当の支払い…が必要」としています。
労基法施行規則では、雇い入れの際に明示しなくてはならない事項として、「始終業の時刻」、「休日」をあげています。これを明示していれば、1日の所定労働時間と週の所定労働日数(7—所定休日)が分かるので、休業手当の支払い義務がある日なのか、休業手当の額はいくらなのかが分かることになります。
問題は、労働契約書や労働時要件通知書がない、あっても、単に「シフトによる」などとしか書かれておらず、所定労働日数や労働日の時間が不明という場合です。今回のような事態で「しばらくは店を閉める」となったとき、休業手当の対象になる労働日が何日あるのか、その日の労働時間が何時間なのかが不定のため、休業手当の支払い額の根拠が分からないことになります。
厚労省の基本的姿勢は「新型コロナウイルスに関連して労働者を休業させる場合、欠勤中の賃金の取り扱いについては、労使で十分に話し合っていただき、労使が協力して、労働者が安心して休暇を取得できる体制を整えていただくようお願いします」(上記Q&A)というものです。Q&Aには、所定労働日数、1日の所定労度時間が明らかでない場合についての説明はありませんが、過去の勤務実績から所定労働日数等を特定して休業手当算定の基礎にすることは、Q&Aの説明の趣旨に沿う取り扱いと言えるのではないでしょうか。
コロナ禍で、「シフト制」についての会社と労働者の間での理解のズレが少なくないのですが、そうした問題について、厚生労働省が、「シフト制」により就業する労働者について、2022年1月に「適切な雇用管理を行うための留意事項」を公表しました。別稿(「シフト制の留意事項」)でご紹介しましたので、ご参照ください。
https://nk-sr2018.com/wp/wp-admin/post.php?post=7312&action=edit
なお、休業の取り扱いに限らず、パートタイマー、有期契約労働者、派遣労働者であることを理由として、正社員との間に不合理な待遇差を設けることは、パートタイム・有期雇用労働法や改正労働者派遣法の規定(大企業と派遣会社は2020年4月、中小企業は2021年4月から施行)に違反する可能性があることにも留意する必要があります。