新型コロナ感染症と休業–3.緊急事態宣言による休業
厚生労働省が公表している新型コロナウイルス感染症に関するQ&Aは、かなり頻繁に更新されます。以下では、「企業向けQ&A」(4月17日付)での追加から、興味深いものをご紹介します。
Q7 緊急事態宣言や要請・指示を受けて事業を休止する場合、労働基準法の休業手当の取扱はどうなるでしょうか。
新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づく緊急事態宣言が4月7日に東京都等7都府県に出されたことを受けたQ&Aの追加ですが、緊急事態宣言による要請等による休業の場合でも、常に休業手当の支払いを免れるとは限らない、という慎重な説明になっています。
まず、休業手当の支払いが必要のなるのは「不可抗力による休業」であること、「不可抗力」とは次の二要素をいずれも満たすこと、という大原則を再確認しています。
“① その原因が事業の外部より発生した事故であること”(原因の外部性)
“② 事業主が通常の経営者としての最大の注意を尽くしてもなお避けることができない事故であること”(使用者としての対応困難性)
新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づく緊急事態宣言や要請は、「①事業の外部において発生した事故」(原因の外部性)であることは認めていますが、注意しなくてはならないのは、②「使用者として休業を回避するための具体的努力を最大限尽くしてもなお避けることができないか」(使用者としての対応困難性)については、事案・事情によりけりとしていることです。
②に該当するかどうかは、例えば、
・自宅勤務などの方法により労働者を業務に従事させることが可能な場合において、これを十分に検討しているか
・労働者に他に就かせることができる業務があるにもかかわらず休業させていないか
といった事情から、”使用者としての対応困難性”があったか判断するとしています。
特措法で休業要請の対象になる業種に「自宅勤務などの方法」をとる余地があるのか、「他に就かせることができる業務がある」のか。難しい場合が多いのではと思いますが、にもかかわらず、「経営者としての最大の注意を尽くし」は、厚労省として言わざるを得なかったのかなと思います。モラルハザードへの注意が欠かせないのは行政機関として避けられないのだとお考えいただいて、御社の実情にもとづいた助成金申請を検討していただければと思います。