新型コロナ感染症と変形労働時間制

Q:中国の部品メーカーからの納品がない。3月下旬からの休業が現実的になってきた。対象期間1月-12月の1年単位変形労働時間制を使っているが、休日振替ができないか。

 1年単位変形労働時間制は、「使用者が業務の都合により任意に労働時間を変更することがないことを前提として制度」なので、「通常の業務の繁閑等を理由として休日振替が通常行われる場合」は、採用できないとされています(平11.3.31基発168号等)。また、取引先からの部品の入荷困難という事情は、「通常の業務の繁閑等」の範囲とみられる可能性があります。こうしたことからすると、振替は難しいというのが原則的な答えになります。

 一方、上の通達は、「労働日の特定時には予想しえない事情」が生じた場合にまで休日振替を認めないという趣旨ではないとして、以下の条件の下で振替を認めるとしています。
・就業規則に休日振替をすることができる旨の規定を設ける
・対象期間(特定期間以外)の連続労働日数が6日以内となること
・特定期間については1週間に1日の休日が確保できる範囲内であること

 なお、「当初予想しがたいような事態」の実例は、近いところでは3.11東北大震災後の計画停電による操業停止でしたが、今回の新型コロナウィルス感染症の事業経営への影響がそれに匹敵する事態にあたるのかどうかについては、特措法の緊急事態宣言が出されたのちの時点でも、行政の見解は明らかではありません。