年次有給休暇の「買取」-年5日の付与義務余話
使用者の方からの「退職前の労働者から年次有給休暇の残日数分の取得の届があった。認めなくてはならないのか」というお尋ね、従業員の方からの「退職前に年休の残りの日数の取得を申し出たら、認めないといわれた」といったお尋ねは、いずれも少なくありません。結論から言えば、使用者は従業員の年休取得を拒否すること(「認めない」と言うこと)はできず、取得時期の変更を求めることしかできません。退職前の従業員に取得時期を変えてもらう余地はありませんので、原則、労働者は、請求した日時での年休を取得することになります。こんなときに、例外的に許容されているのが、残った年休を買い取ることです。
ただし、この買取も、2019年4月から施行された改正労基法により、年10日以上年休がある労働者で、労働者の時季指定や計画年休による取得が5日に満たず、その部分について使用者が時季指定して取得させていないと、残日数の買取をしたとしても、使用者が時季指定義務を果たしておらず、法違反になることに注意しなくてはなりません。
「年休の買取」について、あらためて確認しておくと、次の通りです。(厚生労働省「平成22年版労働基準法」585頁)
〇 年次有給休暇の買上の予約をし、これに基づいて法第39条の規定により請求しうる年次有給休暇日数を減じないし請求された日数を与えないことは、法第39条違反である。」
〇 「なお、労働者が年次有給休暇権を行使せず、その後時効、退職等の理由でこれが消滅するような場合に、残日数に応じて調整的に金銭の給付をすることは、事前の買上げと異なるのであって、必ずしも 本条に違反するものではない。」