年休の出勤率の計算-子の看護休暇の扱いは?
Q 年次有給休暇の出勤率の計算で、「子の看護休暇」や「介護休暇」を取得した日は、出勤日に含めなくともよいですか。
A 子の看護休暇や介護休暇を取得した日を「出勤日」とするという労基法上の規定はないので、出勤率の計算で出勤日に含めなくとも違法ではありませんが、一方で、出勤率計算の分母の「全労働日」から除くことが適当とする考え方が行政から示されています。
出勤率=出勤日÷全労働日
年次有給休暇の要件の一つである出勤率8割以上は、出勤日÷全労働日で計算しますが、「出勤日」と「全労働日」に何を含め、何を除外してよいかということが問題になります。
「子の看護休暇」「介護休暇」:分母「全労働日」から除くのが適当
労基法39条が出勤率8割以上を年休付与の条件としているのは、労働者の勤怠の状況を把握し、特に出勤率の低いものを除外するという趣旨と考えられます。とすると、法律で認められた「子の看護休暇(5日、子2人以上は10日)」や「介護休暇」による不就業は、勤務不良との評価をすべき性質のものとはいいがたいといえます。したがって、「欠勤」(労働日であって出勤日でない) と同様に扱うのは適当ではなく、出勤率算定の分母になる「全労働日」から除くことが適当という考え方が示されています。(厚生労働省「労働基準法(上)」)
半日単位、時間単位での子の看護休暇、介護休暇の取得を取得した日について
子の看護休暇、介護休暇の取得については、従来から認められていた半日単位に加えて、2021年1月から時間単位での取得できるようになりました(※厚労省リーフレット)。これに関連して、半日や時間で看護休暇を取った日の出勤率算定上の扱いをどうするのかという疑問がありますが、これについての行政の解釈は確認していません。
しかし、 「出勤率の計算上の出欠は、労働日を単位としてみるべきものと考えられる」として、遅刻・早退を「欠勤として取り扱うことは認められない」とする考え方(厚生労働省「労働基準法(上)」595頁)にならうならば、半日または時間単位での子の看護休暇、介護休暇を取得した日は、出勤日(計算式の分子)・全労働日(計算式の分母)として扱うのがよいのではないかというのが当事務所としての考え方です。
※https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000582033.pdf
分子「出勤」とみなされる日
労基法39条10項は、「労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかり療養のために休業した期間及び育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律第2条第一号に規定する育児休業又は同条第二号に規定する介護休業をした期間並びに産前産後の女性が第65条の規定によつて休業した期間」は、「出勤したものとみなす」としています。この規定に加えて、年休を取得した日も、労基法39条の趣旨から当然に出勤したものとして取り扱うとされています(昭22.9.13発基第17号)。
・業務上の負傷・疾病で休業した期間
・育児休業、介護休業の期間
・産前産後休業の期間
・年次有給休暇を取得した日
上記以外の、休暇又は休業について、出勤率計算上の扱いは労基法には定められていません。「子の看護休暇(5日、子2人以上は10日)」や「介護休暇」についても出勤率の計算で出勤日としなくとも違法ではないということですが、行政の考え方としては、出勤率計算の分母「全労働日」からこれらの日を除くことによって、出勤率の計算上で労働者に不利にならないようにすることが望ましいというのは上記のとおりです。
出勤率算定の計算式の詳細
「子の看護休暇」「介護休暇」と出勤日・出勤率の算定の関係については上記のとおりです。このほかにも、全労働日から除外すべき日、出勤日から除外すべき日が通達等にありますが、本稿では割愛します。